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ニュースリリース

2020.12.16

コラム

【神保先生のメディカルコラム Vol.41】

快適な生活と健康の実現のために

神保太樹(株式会社CHIKEN 取締役)

「インフルエンザのワクチンについて

前回、ワクチンの目的のお話させていただきましたが、インフルエンザワクチンを打つべきではない人はいるのでしょうか?

日本環境感染学会の発行するガイドラインでは、まず14週までの妊娠初期の方については念のため控えたほうがいいとしているほか、明らかな発熱があるなどの場合については推奨していません。しかし、医療従事者や高齢者、既往症を有する方などについてはハイリスクであるため、ワクチンを打ったほうが望ましいとしているようです。(インフルエンザによる死亡率は50代から上昇しはじめますが、高齢者では急激に高まることが知られています。)妊娠中の方についても妊娠中にインフルエンザなどに罹った場合は、精神神経疾患のリスクが上昇する可能性があるなどの報告もありますので基本的には利用したほうがいいと考えられます。

このように多くのデータはインフルエンザワクチンのメリットを裏付けていますが、実はウイルスの型とワクチンが合わないと十分に効果が得られないと考えられています。例えば2014年にはインフルエンザA(H3N2)型が流行しましたが、この年のワクチンの効果は大幅に低下したと考えられており、この方についてのみここ数年間、効果が低いと指摘されています。このようなことの拡大解釈として「インフルエンザワクチンは効果がない」などとする言説もありますが、実際には一部のウイルス型については効果が薄いと言い換えるべきでしょう。繰り返しますが、基本的にはインフルエンザワクチンを打つべきではないとするデータはありません。(副反応についても実際にはほとんど軽微であり、まれにアナフィラキシーショックによる重篤な症状が出ることも報告はありますが、その頻度は他の医薬品と比べても高いとは言えません。)

以上ですが、そもそも感染するリスクが低い方についてはあえて打たないということも(医療費もかかりますので)選択肢の一つです。しかし、高齢者をはじめとするハイリスクの方については、インフルエンザワクチンを是非受けるべきといえるでしょう。

今回のテーマは少し長くなりましたが、読んでいただいてありがとうございました。
寒く乾燥した冬がやってきますが、皆様はどうぞ健康に気を付けてくださいね。