2020.10.21
コラム
【神保先生のメディカルコラム Vol.39】
快適な生活と健康の実現のために
神保太樹(株式会社CHIKEN 取締役)
「認知症の薬のお話②」
前回の認知症の薬について続きをお話させていただきますね。
さて、前回お話した薬に加えて今話題となっている薬があります。我が国のエーザイ社とアメリカのバイオジェン社が共同開発するアデュカヌマブです。
本年の7月に米国FDA(アメリカ食品医薬品局)に優先審査の対象として承認申請が出ていますが、この薬はアルツハイマー型認知症の脳内に溜まり神経細胞を障害する原因の一つと考えられているアミロイドβ蛋白を除去する作用があるとされます。
このアデュカヌマブの開発には紆余曲折あり、一度は効果が見られないとして試験が中止されました。しかし、その後高用量投与対照群において認知機能障害や日常生活動作が有意に維持されていたということで、申請に至ったと報告されています。実は近年開発が中止となった薬はほかにいくつもあり、アミロイドβ関連だけでも、ロシェ社のクレネズマブやファイザー社のバピネオズマブなどがあります。
新しい薬の開発は常に進んでいます。
上記のほかに有望とされていたアミロイドβが生まれる原因となる酵素を阻害する薬なども2019年には相次いで試験が中止となっています。これらのことからアデュカヌマブは一度試験が中止されたとはいえ、うまくいった薬であると思われます。このような薬がもっと出てくることにより、10年先、20年先のアルツハイマー型認知症治療はもっとうまくいくようになるかもしれません。
ただし、上記の如く薬の開発は非常に難しいというのは言うまでもありません。薬が開発されたことは大変喜ばしいことではありますが、生活習慣に気を付けるなど予防を意識することはまだ非常に大事なことです。私の師匠も常々言っていましたが、10年先の優れた薬の恩恵を得られるよう、たとえ発症するのだとしてもそれを遅くするということは大変に価値があることです。「薬ができた」となると、それについての期待は相当なものとなりますが、皆さんは薬ができるという話に油断せず予防に努めましょう。
また、もし病気の疑いがあったとしても、少しでも病気の進行を抑えられるようチャレンジしていきましょう。
それでは今回はこのあたりで失礼いたします。またお会いしましょう。